2011年からしばらくの間、筆者はドコモ信者だった。唯一SIMロック解除を行っており、1つのSIMに音声+データ(PC用)契約が可能。
機種も豊富でSIMフリーiPhoneを持ち込めばSoftBankより快適に使えるなどワクワク感のあるキャリアだった。
何より新しい物は常にドコモから生まれてきたという実績もあった。アプリをダウンロードするiアプリ、お財布ケータイ、パケ・ホーダイ。常に他社の先を行っていた。
更に当時はキャリア内SIMロックが当たり前だった中、ドコモだけが自由にSIMを使いまわせるという強みもあったのだ。
ショップ対応は親切丁寧でキャリアもしっかりしていた。それがなぜここまで弱ったのか。主観的ではあるが、筆者は加藤社長就任が全てを狂わせたと考えている。
具体的に書いていこう。彼が同社社長に就任したのは2012年6月のことだ。
①ドコモメールの度重なる延期
2012年、クラウド対応の「ドコモメール」導入を発表。当初は2013年1月の開始を予定していた。
ところが開始時期に入ると「3月への延期」を発表。さらに3月になるとまた「延期」。
結局開始されたのは2013年10月で熱は冷めていた。対応機種とされていたSC-01D、SC-02D、F-01Dの3機種は外された。
B to Bの取引では考えられないような遅れ方であり、同社へ不信感を抱くようになった。
②APN、テザリングロックの開始
今でこそ認知され始めたドコモのテザリングロック。ドコモ系列のMVNO SIMを挿入するとテザリングが使えないというものだ。
しかしこれ、最初から存在したわけではない。2011年発売のモデルや翌年のGalaxy S3あたりまでは他社でのテザリングが可能だった。
最初はロックがなかっただけに同社への不満が少しずつ募るようになってきた。
③SIMカードの交換が有料へ(2012年12月1日から)
ドコモでは年に1回だけ、SIMカードの交換(普通サイズからMicro、その逆など)が無料で行えた。親切なサービスだったのだがこれも廃止。必ず手数料がかかるようになった。
それほど切羽詰まっていたことだったのだろうか。ともかくこの頃から改悪が酷くなっていく。
④LTE:後から来たのに追い越され・・・
ドコモは他社より早く2010年の12月からLTEを開始しており、2011年11月には音声端末もデビューさせた。
にもかかわらず、約2年近く遅れて開始したau及びSoftBankに接続率で圧倒的に負けていた。75Mbpsエリアでも実測が3〜4Mbpsなのは当たり前で「おそっしぃ」などと揶揄された。
(有名YouTuberの瀬戸弘司さんらが秋葉原で行った大手3キャリアの速度計測が参考になる)
LTEが普及していないのにLTEスマートフォンのみの販売体制をとる事自体いかがなものなのか。急いで800MHz及び1500MHzの普及を進めるも
既に販売されたLTEスマートフォンは2100MHzにしか対応しておらず空回り。東京・名古屋・大阪で始まるはずの1800MHz LTEも大幅に遅れた。
⑤Nextシリーズ、withシリーズ、styleシリーズの廃止
いわゆるハイエンド、ミドルエンドという端末の住み分けができていたのだが、この選びやすいシステムも廃止。2013年春からドコモスマートフォンに統一され、
ミドルエンドが少なくなりハイエンド重視へ。高額なスマートフォンを好まない人も7〜9万円する端末を選ばざるを得なくなった。
⑥2013年、ツートップ戦略で大批判
iPhoneがないドコモはこの年の夏、XperiaとGalaxyを実質0円で提供し他社からのMNP受け入れ対策として打ち出した。SONYやSamsungファンには朗報だったのだが
逆にSHARP、富士通、NEC、パナソニック、LGなどツートップから外れた企業は端末の販売価格が高額になりメーカーや顧客から批判を浴びた。
確かに冷静に考えれば2社以外のファンは怒るだろう。
結果として日本勢であるNEC、Panasonicはこの後スマートフォン事業から撤退することとなった。
⑦Dサービスでの囲い込みが失敗、結局キャリアフリーへ
ドコモのキャリアの魅力として、同社はDビデオ、Dアニメ、Dヒッツなど「ドコモだからこそ楽しめるコンテンツ」を売りにしていた。
ところが武器であるはずのDシリーズは徐々にキャリアフリーへ。つまりドコモと契約のない人でも利用可能となった。
キャリアとしての独自性(魅力面)に欠けることとなり、ついに顧客流出は止まらなくなる。なお、NOTTVという公共電波の無駄遣いに関して申し上げることは何もない。
⑧iPhoneを導入するも顧客流出止まらず
2013年9月、念願のiPhoneを手に入れたドコモ。加藤社長は「あくまでもラインアップの一つ」としていた。
ところがiPhoneを利用したい顧客は既にSoftBankかauに移行しており、auにおいては「iPhone5で他社から来たユーザーのステイ率は90%以上(田中社長)」とのこと。
導入時期が遅すぎた事に加え、au及びSoftBankのスマートバリュー(固定回線とのセット割)に勝てず苦戦状態は続くことになる。
また、「ラインアップの一つ」とする割には現在iPhone以外に実質0円で提供するAndroid端末は皆無に等しく「iPhone頼み」と言っても過言ではない。
⑨新料金プランへの切り替えで大批判
大手3キャリアの中で唯一、新料金プランへの切り替えを強行したドコモ。これが悪い方へ作用し、先日の決算では減収減益が発表された。
「LINE」などの無料通話アプリが台頭したことで通話する人もしない人もパケットによる通話へシフトした。
そのパケットが新料金プランでは2GBで3500円もするのだから、顧客離れが起きても仕方なかろう。
まとめ
加藤社長就任あたりからドコモが音を立てて崩れていった。「他社が追いついてきたのでは!?」という見方もできるが、それは同時に「ドコモの進化が止まった」とも言えるだろう。
無料だったサービスの有料化や既存プランの廃止、高額すぎる端末にテザリングロック。ドコモ光より他に、やることがあったのではないだろうか。
筆者がドコモに戻ることは、二度とないだろう。