巨額の赤字を流し続ける楽天モバイルの風向きが変わりはじめている。
最強プランの契約者数が512万人に到達し、旧ウィルコムや旧イーモバイルが達成できなかった「500万の壁」をクリアした。
これを機に三木谷社長のSNS発信が盛んになり、どこか自信に溢れた印象が伝わってくる。
携帯接続の民主化(無制限、安価、高品質)を掲げ始めた楽天モバイル。昨日、契約者数が『500万回線』に到達致しました。引き続き更なるサービス向上に向け、グループ一丸となり取り組んでいきたいと思いますので、よろしくお願いします。
楽天モバイル最強プラン→https://t.co/hkjtOq2Oxe— 三木谷浩史 Hiroshi (Mickey) Mikitani (@hmikitani) August 28, 2023
巨額の社債償還もせまる中、どこに勝算があるのだろうか。
今回は、筆者の視点から楽天モバイルを成功に導く「武器」について考察したい。
日本最大級のECサイト「楽天市場」が鍵
結論から書くと楽天モバイル成功の鍵を握るのはECサイト「楽天市場」の存在だ。
2022年の売上高は5兆円を超え、いまやAmazonジャパン(3.2兆円)を上回る日本最大のECサイトに成長。
顧客数の指標とも言える楽天カードは発行枚数3000万に迫り、4人に1人が利用するほど身近な存在になってきた。
そして楽天モバイルはここで活きて来る。ユーザーは楽天市場のポイント倍率が12月から5倍、楽天カードを合わせて6倍になる。
こうなると、どこで購入しても還元率の低い商品は楽天で買うのがお得になる。例えばPS5を見てみよう。
筆者の場合、楽天カード、楽天銀行、楽天証券等を合わせて現在ポイント倍率が10倍。家電量販店で購入すればポイントは669円。
しかし楽天で買うと6,141円も戻ってくるのだ。この他、楽天イーグルス勝利で2倍、楽天カードの日5倍等のイベントが購買意欲をそそってくる。
このように楽天市場はモバイルユーザーの顧客満足度を底上げする位置にあり、利用者が増えれば売上はまだ大幅に伸びる余地がありそうだ。
経済圏では圧倒的に有利
楽天モバイルを成功に導くもう1つの鍵が金融事業である。
昨今は大手3社も金融事業との連携が顕著で、KDDIはマネ活プラン、ソフトバンクはペイトクプランを発表。ドコモはマネックス証券を買収した。
今後は楽天のように銀行とも絡めてくるだろう。しかし、いわゆる経済圏でみると楽天の強さは圧倒的だ。
例えばECサイトはNTTドコモ「dショッピング」は売上高6000億円規模、KDDI「au PAYマーケット」推定1200億、ソフトバンク「ヤフーショッピング」は1.6兆円。
ネット銀行預かり残高ランキングでは楽天銀行 1位、auじぶん銀行7位、PayPay銀行 8位と続きドコモに至っては銀行がない。
証券会社では楽天証券が業界2位。ドコモが買収したマネックス証券は3位、KDDIのauかぶコムは4位、PayPay証券は圏外。
このように楽天は携帯電話が弱い代わりに、経済圏を構成する事業が強く、これが三木谷氏の見せる確固たる自信に繋がっているのではないかと思われる。
懸念事項を払拭できるか
直近では500万契約を突破してプラチナバンド割当を獲得。楽天のモバイル事業に追い風が吹き始めたと言えるだろう。そして上述の通り他社と比べて経済圏も強い。
しかし問題も山積みだ。今後2年間で8,000億円に及ぶ社債償還が迫っており、資金調達のために事業の切り売りが避けられない状況だ。
さらに楽天SPUプログラムが12月から大幅に変更され、楽天での買い物が多い人はポイント還元率が大幅にダウン。顧客離れの懸念が指摘されている。
頼みのプラチナバンドはゼロベースの立ち上げで時間がかかるため、今後1年でモバイル事業の勝敗がみえてきそうである。