NTTドコモの販売戦略が明らかに変化しつつある。
これまではKDDIやソフトバンクと同様に新規顧客ばかりが優遇されてきた。ところが最近オンラインショップを中心にMNP割引が減少しているのだ。
一体どんな心変わりがあったのか。同社の動向を考察していきたい。
新規顧客は定着しない?MNP割引廃止の背景
まずドコモの動向で気になるのがMNP割引廃止である。
これまではMNPを条件に新しい機種でも22,000円の割引が用意されてきた。ところが今年前半から割引終了やポイント付与への変更が相次いでいる。
これでは新規顧客が流入せず売上低下に繋がりそうだが、その背景には「転売」と「即解約」に悩まされる同社の深い事情がありそうだ。
予算をかけてキャンペーンを打っても端末は転売され、回線はすぐに解約されるという問題がいよいよ度外視できない状況なのである。
(一時期は10万円級のiPhoneをタダ同然で配っていた)
そこで同社は既存顧客にも買いやすい戦略にシフトしつつある。その際たる例が「Pixel Fold」だろう。
同モデルはKDDI、ソフトバンクの他、Googleストアも扱っているが、ドコモオンラインショップは最安。おまけにdポイント3万円分が付与される大判振る舞い。
もちろんMNP割引はなし。いつになく既存顧客に魅力的な価格設定になっているのだ。
予算をかけて獲得した顧客が逃げれば赤字。そこで支払い実績のある既存顧客に割引し、盤石な収益基盤を重視する方針にシフトしたのではないだろうか。
MNP割引は中古商品に集約?
ところでMNP割引は完全廃止された訳ではない。8月10日時点では認定中古品や型落ちモデルには22,000円割引が用意されているのだ。
(MNP割引できる現行モデルは「Pixel 7a」だけ)
これも「転売防止」の視点でみると説明がつくだろう。旬を過ぎた型落ちや中古品は最新モデルに比べて転売されにくい。
すぐ解約する可能性が低ければ割引キャンペーンが本来の役目を担いやすい。ドコモ側はこのように考えている可能性があるわけだ。
まだまだ先がみえない携帯電話業界
というわけでドコモは「MNP至上主義」から「長期顧客の囲い込み」に販売戦略を変えつつある。
最新モデルは割引しないで長期顧客が買いやすい環境を用意する。中古品や型落ち品は割引提供して、転売や即解約しない顧客層を取り入れるという図式だ。
2019年以前であれば、高額な違約金を課すことで即解約は防止できた。しかし1,100円以上の違約金が課せない現法律下ではドコモの方針に他社も追随するかもしれない。
ちなみに2024年以降、回線割引の上限は4万円に緩和される。それでも新規より既存顧客が重視されるのか、また攻めの姿勢に戻るのか、今後も業界に注目していきたい。
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