モバイル市場に大きなニュースが飛び込んできた。ソニーモバイルが Xperia1、5、1Ⅱの SIMフリー販売を開始するという。
同社は 2010 年初代から通信キャリアでの販売を一貫してきた。 SIM フリーに消極的だったのは言うまでもない。
それを何故いま更始めることになったのか。この一件の背景を解説したい。
価格差別の概念がないソニーモバイル
スマートフォンを買うには誰しも「予算」がある。2 〜 3 万円の製品で十分という人もいれば、5 万円までと線引きをする人もいる。
そこでメーカーは予算の少ない人と多い人のどちらも取り込めるよう、ラインアップの幅を広くするわけだ。例えばファーウェイは、毎年 P シリーズを 3 つに分けている。
(MVNO とセットなら 1 万円台で入手できる)
昨年なら P30 lite、 P30、P30 Pro、今年なら P40 lite E、P40 lite 5G、P40 Pro といった具合だ。
Galaxy はハイエンドに S、Note シリーズをグローバル展開しながら、ミドルレンジには A30 や A41、ローエンドに A20 など国によって適した製品を投下する。
OPPO もそうだ。2020 年の日本市場では au FIND X2 Pro、Reno3 5G、Reno3 A など顧客の予算やニーズに合わせて選択肢を与えてくる。
ではソニーモバイルはどうかと言うと 2018 年まではハイエンド一択。つまり予算のある人しか相手にしてこなかったし、少し違った変化球のある製品をリリースしてこなかったのだ。
キャリア専売にくわえてラインアップがなく 10 万円する端末を買い続ける人はもはや一握りのファンだけだ。
それは国内シェアに数値として顕著に表れている。IDC 調査によると 2020 年第一四半期、 1 位アップル、2位 SHARP、3 位 Galaxy、4 位 FUJITSU、5 位 Kyocera 、その他とつづき SONY は圏外。
ようやく Xperia8 や Xperia10 Ⅱが投入され始めたが盛り上がっているだろうか。
法律改正で国内キャリアでも売れなくなる
それでも今までは MNP 一括 1 円などで投げ売りすれば在庫はゼロにできた。しかし 2019 年 10 月 1 日の法律改正で値引規制がはいり、以前のようにタダ同然でばら撒くことができなくなった。
これは地獄絵図となって白ロム市場に現れる。 39,800 円~ 42,800 円の相場で数千台~数万ほど白ロムとして販売されたソフトバンク版 Xpera1 は記憶に新しいだろう。
ソフトバンクが今年 Xperia1Ⅱを扱わなかった理由はこの在庫の山をみれば明らかだ。
ドコモと KDDI なら売れるとも限らない。新型コロナウイルスと値引規制の影響をうけて2020年 4〜6 月期のスマートフォンの出荷台数はドコモが 150 万台、KDDI が45 万台前年同期比で減ったことを決算報告会で明らかにした。
日本ではキャリアがメーカーから一括で買い上げることから、売れなければ在庫リスクとなる。今回の決算をみる限り「ハイエンド Xperia の出荷台数を減らしたい」という旨がソニー側に伝えられた可能性は高い。
頼みのキャリアも取扱いが減る。そうなれば自分たちで直接販売するしか方法はない。だからこそ今、SIMフリー販売を始めたのではないだろうか。
ファンを囲い込んで PS5 で巻き返せ!
ただし SIMフリー販売を開始したメリットはかなり大きい。余計なアプリがなく、Dual SIM 対応でおサイフケータイ搭載。これだけでも今まで海外から輸入していたコアなファンを取り込める。
しかもただ販売するだけでなく独自のメーカー保証が用意されたのも好印象だ。こうした流れをミドルレンジにも波及させて MVNO とのセット販売にシフトすればある程度の国内シェアは戻せるかもしれない。
またソニーにはプレイステーション 5 という兵器がある。PS 5 のソフトを Xperia ならクラウド上で遊べる。そんな仕組みを構築すれば、ゲーミングスマホとして生き残る可能性だってあるはずだ。
果たしてそこまでいくだろうか。スマホ事業生き残りをかけた最後の戦いが始まろうとしている。。
出典:2020年第1四半期 国内携帯電話・スマートフォン市場実績値を発表
Twitter をフォローする!skyblue_1985jp