総務省で開催されている有識者会議にて、アップルが携帯電話回線の割引規制を解除するよう求めていたことがケータイジャーナリスト石川氏のツイートで明らかになった。
アップルの人「低料金プランが普及する中、改正電気通信法の目的は達成された。総務省には規制の解除をお願いしたい」
— 石川 温 (@iskw226) May 11, 2022
これをみて「あれ?」と思う人もいるだろう。当ブログでもご紹介しているように、iPhoneなら一括1円でばら撒かれているからだ。
今回はアップルが一体何を求めているのか解説していきたい。
改正電気通信事業法の限界
まず整理しておきたいのが改正電気事業通信法だ。
2019年10月からスマートフォン契約に割引上限(2万円)が設定され、通信キャリアはこれを遵守せざるを得なくなった。
この影響で消費者は今まで1円で貰えていた10万円級のiPhoneを8万円で買うしかなくなった。当然、出荷台数は伸び悩み、2020年第3四半期は新型コロナの影響もあって前年比で10%落ち込んだ。
そこでキャリアが導入したのが「契約なしでも値引き」作戦だ。10万円のiPhoneを最初から2万円で販売する。回線を契約すれば1円で提供できるという荒業である。
例えばiPhone SE 第3世代のポップを見てみよう。本体代金65,335円から43,325円が値引きされ、最初から22,000円で販売されている。au回線を契約すれば「10円」で提供されるわけだ。
しかしこのやり方は「本体だけください」と言われたら店側が損する欠点を孕んでいる。しかも法律上キャリアショップはこの単体販売を拒否することができない。
いまや週末になると単体販売を求める顧客と在庫を死守する(隠す)キャリアショップの攻防が起きており、もはや制度の限界がきていると言わざるをえない。
アップルは2019年10月以前を求めている?
話を戻すとアップルが有識者会議で求めているのは2019年10月以前の状態、つまり2万円を上限とする割引の撤廃であろう。
割引規制後もアップルはiPhone販売拡大の努力をしてきた。それまでアップルストアでしか購入できなかったSIMフリーiPhoneの販路を全国のヨドバシカメラ、ビックカメラなど家電量販店に拡大。
(2020年春から急速に拡大した)
直販価格のためキャリアよりも数万円安く、MVNOやサブブランドSIMとセットで売上を伸ばしていった。しかしこれでは満足いかないらしい。
もし割引制限が解除されて2019年10月以前に戻れば、キャリアは回線割引だけで堂々と一括1円を販売できるだろう。
本体を最初から値引きする必要もないから在庫を隠す必要もない。むしろ現場スタッフは安心して働くことができそうだ。
しかし総務省は一括1円が反社会勢力の資金源になると指摘しており完全なる解除は難しいと思われる。
現実的なのは2万円の割引上限を例えば3~5万円に緩和すること。しかしそれでも転売する人はするし反社会勢力の資金源を絶つことにはならない。
落とし所はどうなるだろうか。スマートフォンの出荷台数を伸ばしたいメーカーと激しい攻防が起こりそうだ。
出典:7~9月の携帯出荷台数は2019年から6.5%減、新型コロナの影響も
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