携帯電話料金引き下げやSIMロック禁止など容赦なく改革を迫られる携帯電話大手3キャリアだが落ち込んでいる暇はなさそうだ。
公正取引委員会はドコモ、KDDI、ソフトバンクが実施する「購入サポートプログラム」が独占禁止法違反に抵触する可能性があるとして販売方法の見直しを要請する見通し。
(資料は以前、総務省で報告されたもの)
同プログラムはスマートフォンを36~48分割で購入し12~24ヶ月後に返却することで残債を免除する買い方。本体価格が15万円など高額スマホを入手する手段として利用する人も少なくない。
「通信と端末の分離政策」を徹底する観点では賛成だが、あらゆる値引が禁止された結果、高額スマホが売れにくくなる懸念が出てこないだろうか。
iPhoneが軒並み売れなくなる!?
とくに真っ先に影響しそうなのがiPhoneだ。
日本では改正電気通信事業法が施行された2019年10月以降、スマホ本体の値引上限額は2万円と定められ10万円を越えるiPhoneは一気に敷居のたかい存在となった。
困ったアップルは長年キャリアショップに限定していたiPhoneの販路を家電量販店に拡大させている。
(ビックカメラ、ヨドバシカメラなどでは当たり前のようにSIMフリーが入手可能になった)
SIMフリーiPhone取扱い店舗はコロナ禍にも関わらず2020年から一気に拡大し、キャリアの出荷台数落ち込みを本気で補填したがっていると思われる。
そうした中、キャリアは残債免除型の「端末購入サポート」までもが規制されれば毎年9月に発表される旗艦モデルのiPhone販売がより難しくなるだろう。
(そもそも残債免除プログラムは本体価格が14万円を越えたiPhoneXと同時期に登場した)
しかも2万円を上限とする値引き以外にも「長期顧客の優遇」、「MNP転出希望者の引き留め」も禁止され、既存顧客に特別なクーポンを配布する事すら出来きない。打つ手なしになりかねないのだ。
むろん、空いたシェアに国内メーカーが台頭すれば日本経済回復の観点からも歓迎できる。ただアップルが「日本市場は旨味がなくなった」と判断すればアップルカードと言ったサービスの投入遅れや見送りなんて話が出てくる可能性だってゼロではないだろう。
そうした事態はアップルファンからすれば当然避けたい点である。
Androidの勢力拡大する!?
いっぽうでAndroidは法律に迎合する形でうまく立ち回っている。
販売価格を22,000円以下に設定し、割引後に一括1円の手軽さを見せる戦略的な販売はよく見かける。
(法改正後にすぐリリースされたGalaxy A20は割引しても一括1円を演出できた)
(2021年発売のXiaomi Redmi Note 9Tは5G, Felica, 3眼カメラで22,000円以下)
さらに3~4万円台であれば割引適用で1~2万円台で購入できるため、今後はこうした買いやすくて現実的な機能を備えた価格帯でのコスパ勝負が熱くなるだろう。
(OPPO Reno5 Aは39,600円。MNPで18,000円でゲットした)
ただし以前の記事で書いたように日本のiOSシェアは66%、Androidは33%で諸外国と比べて異常にiPhoneが多いのも事実。
高くともiPhoneを購入する習慣は続くのか、それとも素直に低価格Androidにシフトする人が増えるのか。
「通信と端末の分離政策」が徹底されたことで端末単体購入が可能になる一方、厳しい値引規制によってキャリアショップを取り巻く携帯電話市場は大きな転換点を迎えそうだ。