楽天グループCEO三木谷氏は、完全仮想化技術「Open RAN」をドイツの通信事業者1&1社に導入し、稼働が開始したことをXで報告している。
ドイツ1&1社(1200万人のドイツ最大MVNO)が楽天が構築した完全仮想化・Open RANソフトによるネットワークが完成、本日より稼働開始。ヨーロッパ第一号のOpen RANネットワークの誕生です。順次MVNO会員はMNOサービスの方に吸収されて参ります。『楽天が主導するOpen…
— 三木谷浩史 Hiroshi (Mickey) Mikitani (@hmikitani) December 8, 2023
この何気ない投稿は専門用語でよく理解されにくい。しかし、同社のモバイル事業の未来を左右するも大切な出来事だ。
今回は「Open RAN」の概要解説と今後の楽天モバイルの見通しを考察したい。
「OpenRAN」は楽天モバイルそのもの
まず「Open RAN」とは、安価に調達できる既存サーバーや独自ソフトウェアを使って携帯電話ネットワークを構築する技術である。
(楽天モバイル公式サイトより引用)
従来であればNokiaやファーウェイといったメーカーの専用デバイスを一気に調達するのだが、膨大すぎるコストがデメリットであった。
楽天モバイルの最強プランが安いのは「Open RAN」を商用展開したことで最大40%のコスト削減に成功したからと言えるだろう。
そして同社はこの技術をノウハウとしてパッケージ化し、海外の通信事業者に営業をかけていた。ドイツでの成功事例はその第一号になったのである。
「OpenRAN」成功で何が変わる?
ドイツで成功という実績を残したことで、楽天は「Open RAN」導入ノウハウをさらに受注できる可能性が高まってきた。
具体的な受注金額こそ非公開であるが、三木谷氏は「数千億円」であるとMWC 2022で明かしている。
もし2~3千億円なら楽天モバイルの財務を一変させる規模であり、あと1~2件の受注で楽天グループの黒字化が一気に見えてくる。
三木谷氏は楽天モバイルが500万件を突破して以降、どこか自信ありげの雰囲気を醸しているが、その裏には「Open RAN」の成功を見据えていたのかもしれない。
ただしあまり悠長なことも言っていられない。「Open RAN」は6Gを見据えた技術として注目されており、世界中で試験運用が始まっている。
導入を希望する企業を見つけても、圧倒的な資本力や知名度のあるライバル、例えばNTTドコモが横入りしてくると対抗しにくい。
ブルーオーシャンのうちに1件、2件と受注してキャッシュフローを得るのが、楽天モバイル黒字化に向けた次の踏ん張りどころと言えそうだ。
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