今季注目のスマホ「AQUOS Sense8」に関して記事を書いたが、同機種には全くの別の視点でもう1つ注目すべき点がある。
SHARP公式サイトで「Spec(スペック)」をタップすると次のページが出現する。何か違和感に気が付かないだろうか。
(後からSIMフリーが出ればいいという話ではない)
SHARPの製品であるにも関わらず、元になるはずのスペックが存在しない。つまりSIMフリー版が欠如しているのである。
SIMロック時代であれば、これはむしろ自然だったのだろう。しかし令和のいま、これの何がまずいのか筆者の視点で解説していきたい。
端末単体での購入が難しい
1つ目の問題は、各キャリアの格安プラン、およびMVNOユーザーの単体購入が難しいこと。
通信事業者は白ロム販売が義務付けられており、本来であれば簡単に本体だけを買うことができる。ところが現状は理想とはほど遠い。
例えばNTTドコモは在庫があるのに商品を発送せず2週間遅らせたり、白ロム購入のたびにdアカウントを新規作成しなければ購入できない。
ソフトバンクは白ロム購入に限って「一括払い」を拒否し、必ず分割払いの審査を経ないと購入できない仕組みを導入。これで行政処分を受けている。
au Online Shopは過去にクレジットカード決済を弾いて販売拒否していた経緯がある。
これでも行政処分を受けて買いやすくなってきた方だが、各社とも未だに白ロム購入ページは到達しにくく、嫌々販売しているのがわかるだろう。
通信キャリアの回線が無ければ端末が買いにくい。これのどこが「通信と端末の分離」といえるのだろうか。
キャリア版は顧客不利になりやすい
もう1つの問題はキャリア版Androidスマホは顧客不利になりやすいこと。過去の例をいくつか振りかえってみよう。
例えばKDDIはSIMロック解除なしにMVNO SIMを読み込ませず、ドコモはSPモード以外でテザリングさせぬようMVNOに制限をかけていた。
(他社周波数に対応しないau端末)
ソフトバンクはAndroid SIMを他社スマホで読み込ませない、本来使えるはずの他社周波数を塞ぐなど、やりたい放題だったのである。
こうした制限は度重なる行政指導や法改正で改善されてきたが、行政に指摘されなければ何一つ改めようとしない。
各キャリアで白ロムが買えるようになっても、それは何かしらの制限を受けているメーカーROMでしかないのだ。
キャリアに甘えても結局は滅びる
こうした商習慣が残るのはキャリアがメーカーから在庫を一括で買い取っているからだ。
確かにメーカーとしてはキャリアに依存した方が在庫リスクを抱えずに販路も伸ばしやすい。しかし、それで成功したメーカーはどれだけあるだろう。
(ソフトバンクでしか買えないLeitz Phone2)
富士通、東芝、CASIO、Panasonicといった華々しい活躍をみせたメーカーは、このやり方で全て撤退している。
逆にキャリアに対して強気のApple、Google、Xiaomi、OPPOは残っており、もはやキャリア依存がメーカーの生き残る術ではないはずだ。
キャリアがメーカーを潰しているとまでは言わないが、メーカー各社にはこの実情を深刻に汲み取ってほしい。SIMフリー版は最初から出すべきである。